人事・総務の方へ(河野慶三コラム)

第1回 ストレスチェック制度の実施状況

 2017年7月26日付けで、厚生労働省がストレスチェック制度の実施状況を公表しました。ストレスチェックは、労働安全衛生法で事業者にその実施が義務付けられています。事業者は、1年以内ごとに1回定期にストレスチェックを実施し、その結果を所定の様式を用いて労働基準監督署に報告しなければなりません。この制度は、2015年12月1日に始まりました。ですから、今回の全国集計は第1回ということになります。

 公表された結果には実数が記載されておらず、すべて割合のみの数値なので、全体像が把握しにくいのですが、50人以上の事業場全体での実施率は82.9%でした。事業場規模別では、@50〜99人:78.9% A100〜299人:86.0% B300〜999人:93.0% C1,000人以上:99.5%で、規模が大きくなるほど実施率が高いという結果でした。300人以上の規模の事業場では実施率が90%を超えており、1年目としては順調な結果だと言えるでしょう。

 ストレスチェックを受けるかどうかについての判断は、個々の労働者に任されています。受診義務がかかっている健康診断とは違って、受けたくなければ受けなくてもよいのですが、ストレスチェックを受けた労働者の割合は78.0%でした。また、この数値には事業場の規模による差はみられませんでした。

 また、高ストレスであり、医師による面接指導が必要と判断された受検者のうち、事業者に面接指導の実施を申し出た受検者の総受検者に対する割合は0.6%でした。事業場規模別では、@0.8% A0.7% B0.6% C0.5%の順でした。1,000人の受検者がいると5〜8人の面接指導希望者がいたということがわかりました。実務上は、医師による面接指導が必要と判断された受検者に対する申し出者の割合を知りたいところですが、国は事業者にその提出を求めていません。集団分析のデータには事業場ごとの高ストレス者数およびストレスチェック実施者が医師による面接指導を必要と判断した労働者数があるので、その結果を用いれば、事業場では、申し出をした受検者の割合を知ることはできます。

 なお、ストレスチェックを実施した事業場のうち、医師による面接指導を実施した事業場の割合は全体で32.7%でした。事業場規模別では、@22.6% A36.9% B61.0% C85.0%で規模による差が顕著でした。面接指導を担当した医師は79.1%が事業場選任の産業医であり、この数値には事業場規模による差はみられませんでした。

 さらに、努力義務である集団分析を実施した事業場の割合は全体で78.3%でした。規模別では、@76.2% A79.7% B83.6% C84.8%で、規模が大きくなるほど実施率が高くなっていましたが、規模別の差は大きくありませんでした。それぞれの事業場で集団分析の結果がどう活用されたかが気になるところです。

このコラムの執筆者プロフィール

河野慶三先生

河野 慶三 氏(新横浜ウエルネスセンター所長)

名古屋大学第一内科にて、神経内科・心身医学について臨床研究。
厚生省・労働省技官として各種施策に携わる。
産業医科大学、自治医科大学助教授など歴任。
富士ゼロックスにて17年間にわたり産業医活動。
河野慶三産業医事務所設立。
日本産業カウンセラー協会会長歴任。
平成29年より新横浜ウエルネスセンター所長に就任。