第9回 法定の「障害者雇用率」が2.2%に上がります

「障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)」(障害者雇用促進法)は、法定雇用率をうわまわる身体障害者および知的障害者の雇用を企業に義務付けてきました。この法律は2013年に改正され、法定雇用率の算定に新たに精神障害者を加えることが決まっているのですが、その施行は2018年4月1日となっています。改正法の公布から時間がたっていることもあって、今年の4月から施されることが十分に周知されていないようです。
国が定めている法定雇用率の計算式は下記のとおりです。今までは含まれていなかった精神障害者数がこの式の分子に加わるため、雇用率が上がります。
法定雇用率=
(身体障害者・知的障害者・精神障害者である常用労働者の数)
+(失業している身体障害者・知的障害者・精神障害者の数)
常用労働者数+除外率相当労働者数+失業者数
(除外率):
一律に法定雇用率を適用し雇用義務を定めることになじまない業種について、事業主負担を調整する観点から、雇用義務の軽減を図るために設定されている数値のこと。この率が50%以上の職種は「船員等による船舶運用等の事業」:80%、「幼稚園、幼保連携型認定こども園」:60%、「道路旅客運送業」・「小学校」:55%、「石炭・亜炭鉱業」:50%である。この制度は廃止されることが決まっており、現在段階的に縮小されている。
この式で求めた雇用率をそのまま適用すると上昇幅が大きいため、5年間の猶予期間が設定されています。今年の4月1日から適用される法定雇用率は、民間企業では2.2%です。現行は2.0%なので0.2%上がることになり、今までは従業員50人当たり1人であったのに対し今後は45.5人に1人となります。心配なのは、労働衛生管理体制が整っていない50人未満の企業にも雇用義務が生じることです。また、期日は未定ですが2021年4月までには再度雇用率が上がって2.3%になること、猶予期間が切れる2023年4月以降は計算式で求めた数値になることも決まっています。
なお、法律は、身体障害者・知的障害者・精神障害者すべてを雇用することを求めていないので、どの障害者であっても合算した数が法定雇用率を満たしていればよいことになっています。
厚生労働省の集計によると、民間企業の2017年6月1日現在の障害者雇用の実態はつぎのようになっています。この3月末までは、精神障害者の雇用は義務づけられていませんが、現在でも雇用した場合には雇用者数にカウントすることができます。
- 雇用されている障害者の総数は495,795人で、2016年に比べ21,421人(4.5%)増加した。
- 内訳は、身体障害者333,454人(対前年比1.8%増)、知的障害者112,293人(7.2%増)、精神障害者50,047人(19.1%増)であった。
- 実雇用率は1.97%(2016年は1.92%)であったが2.0%には届いていない。法定雇用率達成企業の割合は50.0%(2016年は48.8%)であった。
- 企業規模別の実態は次のとおりであった。
企業規模 人数(人) 実雇用率(%) 達成企業率(%) 50〜100人 45,689 1.60 46.5 100〜300人 99,028 1.81 54.1 300〜500人 44,482 1.82 45.8 500〜1,000人 58,912 1.97 48.6 1,000人以上 247,683 2.16 62.0 - 産業別の実雇用率が法定雇用率2.0%をうわまわっているのは、高い順に、医療・福祉(2.50%)、生活関連サービス業・娯楽業、電気・ガス・水道業、農・林・漁業、運輸業・郵便業、製造業(2.02%)であった。