第14回 第13次労働災害防止計画

第13次労働災害防止計画が2018年2月に策定されました。
労働災害防止計画は、労働災害の防止のための主要な対策に関する事項その他労働災害の防止に関し重要な事項を定める計画のことです。その策定義務が、労働安全衛生法第6条で厚生労働大臣に課されています。
第1次計画は、1958年に労働基準法の規定にもとづいて策定されています(労働安全衛生法が労働基準法からわかれる形で制定されたのは1972年です)。この計画は5年単位で策定されることになっているので、今までに60年が経過したことになります。この第13次で61年目になるわけです。
第13次労働災害防止計画の重点事項として、
- 死亡災害の撲滅を目指した対策の推進
- 過労死等の防止等の労働者の健康確保対策の推進
- 就業構造の変化及び働き方の多様化に対応した対策の推進
- 疾病を抱える労働者の健康確保対策の推進
- 化学物質等による健康障害防止対策の推進
- 企業・業界単位での安全衛生の取組の強化
- 安全衛生管理組織の強化及び人材育成の推進
- 国民全体の安全・健康意識の高揚等
の8項目が取り上げられました。これが、2018年からの5年間、国が重点的に取り組む課題です。抽象的な表現になっていますが、皆さんの事業所が抱えていて解決を必要としている問題が、いくつもこの中に含まれていることは間違いないでしょう。そうした具体的な問題に積極的に取り組むことを、国は各企業に求めています。
今回の計画で掲げている2022年までの5年間で減少させる労働災害の数値目標はつぎのとおりです。
- 〔1〕死亡災害
- 死亡者数を2017年比で15%以上減少させる。重点とする業種は、建設業・製造業・林業(2017年の死亡者数は925人)。
- 〔2〕死傷災害(休業4日以上の労働災害のこと)
- 死傷者数を2017年比で5%以上減少させる。重点とする業種は、陸上貨物輸送業・小売業・社会福祉施設・飲食店(2017年の死傷者数は118,079人)。
個別の課題で数値目標が掲げられているのは、つぎの6項目です。@〜Bがメンタルルヘルスにかかわる項目です。
- 仕事の不安、悩みまたはストレスについて、職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者の割合を90%以上とする(2016年:71.2%)。
- メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上とする(2016年:56.6%)。
- ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合を60%以上とする(2016年:37.1%)。
- GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)による分類の結果、危険性または有害性などを有するとされるすべての化学物質について、SDS(安全データシート)の交付を行っている化学物質譲渡・提供者の割合を80%以上とする(2016年:ラベル表示 60.0%,SDS交付 51.6%)。
- 第三次産業および陸上貨物運送業の腰痛による死傷者数を死傷年千人率で2017年比5%以上減少させる。
- 職場での熱中症による死亡者数を、2013年〜2017年までの5年間と比較し2018年〜2022年の5年間で5%以上減少させる。
1年間の死傷者数を1年間の平均労働者数で割った結果に1,000をかけた値で、労働者1,000人当たりの1年間の死傷者数のこと。
一般に、事業場の労働者数が多ければ死傷者数も多くなることが予測されるので、事業場間や企業間の比較をするには、単位労働者数当たりの死傷者数を用いる。