第15回 テレワーク従事者にVDT 教育をしてください

テレワークについては、人事・総務向けの第11回で取り上げましたが、ある日、ある従業員との産業医面談でつぎのような話が出ました。
先生もご承知のとおり、私は通勤に片道2時間以上かかり、それが負担になっているので、最近導入されたテレワークを使い始めました。会社の決まりでは、週2日まで使っていいのですが、今のところ週1日にしています。
テレワークは、通勤時間の長い方にとっては、自分のために使える時間を増やす方法としていいですね。それで、もう1日増やすことを考えているのですか。
私はそうしたいのですが、ちょっと困っていることがあります。
それは、具体的にはどんなことですか。
テレワーク従業員の就業状況を管理監督者が確認する方法は、システム上、PCのキー操作が継続して行われているかどうかです。ですから、資料を読んだり、キー操作をしないで考えている時間は、就業していることにならない可能性があります。キー操作をしていないと、画面にランプが点灯します。
ランプが点灯している時間が自動的に集計され、それで実労働時間が記録されていくのですか。
いえ、何時から何時まで働くかは事前に管理監督者に届け出て承認を受けているので、承認を受けた時間が実労働時間になることにはなっています。ただ、管理監督者によっては、ランプの点灯時間が長いとその理由を確認するといったことはあります。成果が上がらないと、半期ごとの評価の際に、この記録がその原因を説明する事実として管理監督者が使う可能性もあります。
ランプが点灯している時間が長いと、管理監督者は気にはなるでしょうね。
私は、管理監督者からそうした指摘を受けることは嫌なので、常にキー操作をするようにしています。これが結構大変なのです。夕方になると頭が痛くなったり、集中力が低下したりします。
テレワークを週2日にしたいけれどしていないのはそのためなのですね。
はい。
これは一見笑い話のようにみえますが、几帳面で融通が利きにくいという行動特性をもっている人にとっては現実の問題です。テレワークがVDT作業で成り立っていることは言うまでもありません。VDT作業の作業管理の大原則は作業姿勢の管理と作業時間の管理です。1時間作業をすれば必ず10〜15分のブレイクを入れることが必須です。
VDT作業は、ルールにしたがって作業をしないと、必ず心身の健康状態に影響を与えます。VDTの健康影響は自覚症状が主体で、検査をしてもその症状を説明できる所見はみつからないのが普通です。しかし、こうした症状は慢性化し、業務遂行に大きな悪影響を及ぼします。テレワーク導入に際しては、あらためてVDT教育を行ってください。
また、就業時間の管理方法についても、管理監督者、従業員双方に具体的に説明し、余分な心理的負荷をかけないように配慮してください。
なお、今回は、産業医向けにVDT作業の健康影響についての情報を掲載しています。参考にしてください。