健康開発科学研究会は、1998年11月に、産業保健分野においてはわが国で初めて専門職の倫理原則を策定し「産業医の倫理綱領」として公表しました。
この綱領は医療、雇用、労働、経営という多くの分野が関係する産業保健の現場において、産業医が判断に迷う様々な課題に示唆を与える積極的な行動指針として、広く役立てられてきました。当時示した倫理原則の多くは、現在もなお妥当性を保持しています。
しかし、その後、労働安全衛生法の改正に加えて、母性保護や労働者派遣に関する法令が改正され、さらには、個人の健康情報の利用が進む中、個人情報を保護する法令が施行されるなど、産業保健に関係の深い新しい政策が推進されてきました。
また、独立開業する産業保健専門職が登場するなど、産業医のあり方が多様化しています。近年、諸外国や国際機関においても、それぞれの社会の変化に合わせた倫理指針の改定が進められました。
そこで、わが国においても、これらの変化に合わせた産業医の行動指針を示す必要があると認識し、このたび大幅な改定と加筆を行い、「産業医の倫理ガイダンス」として公表することになりました。
改定に際しては、健康開発科学研究会の会員に対して改定作業への参加を募り、倫理部会において委員会を組織し、原案を作成しました。
この原案に対して、委員以外から識者に批評いただき、それらの意見を踏まえた最終的な修正を加えて、ここに公表することになりました。
第一線で活躍する産業医をはじめとして、多くの関係者に本書をご利用いただければ幸いです。
■編集:NPO法人 健康開発科学研究会 倫理部会